常温黒染剤は、表面処理の黒染め加工を行う際に使用する専用薬剤の種類を示す名称で、18〜25℃の常温の水溶液に1〜2分間の浸漬、または塗布することにより、鉄鋼材を黒く染めることから常温黒染剤と呼ばれています。
使用時は、加温黒染剤のように薬剤を沸騰させる必要がないので、手軽にできることから簡易黒染めとしても適しています。
常温黒染処理は、金属イオンによる置換メッキの応用で、生成される黒染被膜は銅を主体とした金属の黒色酸化物です
(光沢を抑えたマット仕上げ)。
一般的に、常温黒染めは少量部品の着色、補修向きですが、「インスタブラック333(米国Electrochemical product Inc.社製)」はスマット(スス状の汚れ)が発生しにくく、量産部品の黒染め加工に使用が可能です。
●常温の水溶液に1〜2分間の浸漬、または塗布することにより、短時間で簡単に高級感のある黒染め加工を行えます。
●加温黒染めに比べて作業の安全性が高く、簡易な設備で処理が可能です。
●寸法精度に影響を与えることなく(被膜厚0.1〜0.2μm程度)、軟鉄、高炭炭素鋼、焼入れ鋼、鋳物まで幅広い鋼材の黒染め加工が可能です。※鉄鋼以外の鋼材には反応しません。
●被膜厚が加温黒染め被膜の1/10程度と薄く、耐摩耗性や防錆効果に劣ります。
●よく脱脂を行ってください。水溶液ですので、油分が付着していると反応しないか色むらを起こします。
●錆や染み汚れがある場合は、脱脂後に酸洗(S-300に数分浸漬)を行い錆や汚れを完全に除去してください。
●ワーク表面にスマット(すす状の汚れ)が付着します。すすぎ後にウエスで軽く押し拭きを行ってください。尚、インスタブラック333はスマットの発生が無く拭き上げが不要です。 ※強く擦ると被膜が薄くなるのでご注意ください。
●黒染め液への浸漬時間は120秒を超えないようにしてください。
●黒染液は酸性液であるため、すすぎが不十分ですと粒錆が発生します。すすぎは綺麗な水で充分に行ってください。
●黒染め液の温度が18~25℃の範囲でご使用ください。液温が低すぎると染まりが悪くなりますので、冬場はご注意ください。
●黒染め補修には、補修部分の周りを油性マジックでマスキングしてください。溶液が黒皮に付着すると被膜を溶かしてしまいます。補修後は、油性マジックをシンナーやパーツクリーナーで除去してください。
●一度使用した溶液は、戻さずに別容器で保管してください。
従来は染まりにくかった鋳物、焼結金属、鋳造品や熱処理したHRC60までの工具鋼も黒染め可能で、高性能かつ低価格を実現した推奨常温黒染め剤です。