目次
▷黒染め加工とは。・・・鉄鋼材の防錆を目的とした表面処理方法の1つです。
▷黒染め加工は、内製化出来る!・・・3つの問題点と、黒染め加工の内製化という選択肢
▷加温黒染め加工の特徴・・・金属表面内側に1μm程度酸化させて黒錆(四三酸化鉄)を生成します。このため、鍍金とは異なり寸法精度に影響を与えません。
▷黒染処理機器の機能・特徴・・・一連の黒染処理工程:①脱脂(加温)▶︎②濯ぎ▶︎③黒染め加工▶︎④2段階の濯ぎ▶︎⑤防錆しょりまで全て網羅されています。
▷セット内容・・・半自動黒染処理機器本体をはじめ薬剤一式、作業用備品などのセット内容をご紹介
▷【動画】黒染加工作業手順紹介・・・半自動黒染処理機器を使用した一連の黒染め加工作業およそ3分で紹介する動画
▷半自動黒染処理機器仕様・・・標準タイプ、拡大タイプの詳細仕様をご紹介
▷事前準備事項・・・標準タイプ、拡大タイプ、給水・排水用ホース内径、給電などをご紹介
▷半自動黒染処理機器図面・・・半自動黒染処理機器の図面をご紹介
▷大型黒染処理設備・・・大型黒染処理設備や全自動黒染処理設備など、任意の仕様での設備導入をサポート致します。
▷大型黒染処理設備導入事例・・・複数の導入事例画像や全体構成図をご用意
▷上手な黒染め加工のポイント・・・失敗しない上手な黒染め加工のポイントを5つご紹介
黒染め加工とは、鉄鋼材の防錆を目的とした表面処理方法の1つです。
黒染め加工には、様々な鉄鋼材や鋳物の表面に化学反応を起こして1μm程度の
黒錆(四三酸化鉄)皮膜を形成させるものです。
脱脂工程の後、沸騰した専用黒染剤の中で15分〜20分煮沸することにより、
金属表面内側に1μm程度酸化させて黒錆(四三酸化鉄)を生成させます。
このため、鍍金とは異なり寸法精度に影響を与えません。
黒染め処理は、フェロマイト処理、SOB処理とも呼ばれます。
化成処理により生成された四三酸化鉄(Fe3O4)の黒皮は、耐摩耗性があり擦っても
剥がれることが無く、主に、屋内で使用する機械部品の防錆目的で使用されます。
含油性が高く、鉄鋼材部品に長期の防錆効果を付与します。
※被膜密度5.17g/cm3、耐熱温度(直火)250、(伝導熱)300°
被膜CAS番号:1317-61-9
この他に、酸性液に浸漬するだけで鉄鋼材を黒く染める常温黒染めがあります。
脱脂工程の後、専用の黒染め剤に常温で2分程度浸漬するだけで表面に銅などの
金属イオンの黒色酸化被膜を付ける処理になります。
皮膜厚は0.1〜0.2μmと薄く(加温黒染めの1/10程度)、防錆力はありません。
主に工芸品の着色目的で使用されます。
1.素材自体の表面約1μm厚を四三酸化鉄(Fe3O4)の黒色皮膜に転移させ寸法精度に影響を与えません。
2.皮膜は耐摩耗性があり、擦って剥がれたり黒カスが付いたりしません。
3.皮膜が防錆剤を保持して、優れた防錆効果を発揮します(屋内使用)。
4.処理液は、廃棄する事無く継ぎ足しにより繰り返し使用でき経済的です。
1.一連の黒染処理工程(20分程度):①脱脂(加温)▶②オーバーフロー濯ぎ▶③黒染め加工▶④2段階のオーバーフロー濯ぎ▶⑤防錆処理まで全て網羅されています。
2.設定温度を超えると、指定秒数の注水が自動的に行われますので、常に一定温度帯での煮沸が行われます。溶液の濃度、沸点管理が不要で、鋼材に応じた最適な黒染品質を確保できます。
3.オーバーフローすすぎで排出された排水(脱脂後及び黒染後)は、低濃度のアルカリ水ですので、酸で中和放流が可能です。
※自動中和装置をご希望の場合は装置メーカー(CEMCO社)を紹介させて頂きます。
脱脂
浸漬時間2~5分
50~70℃程度に加温した「デグリース・Super」5~6倍希釈液に2~5分浸漬します。
●油が多く付着した部品は、ウエスで軽く拭きあげてください。
●長時間部品を浸漬すると、部品表面にアルカリ皮膜を形成して黒染時に色むらが発生します。浸漬は長くても10分程度に留めてください。
すすぎ
水洗時間1分程度
水をオーバーフローさせながら1分程度よくすすぎます。
●錆びや汚れがある場合は、脱脂後に〈酸洗い〉を行います。無臭塩酸か10%程度の希硫酸に5~20分程度浸漬してタワシで擦ってください。よくすすいだ後に、黒染剤を少量溶かしたアルカリ水に通して中和してください(塩酸は揮発性が高く、周囲の金属を錆びさせますので、保管は密封できる蓋つき樹脂容器をご使用ください)。
黒染処理
煮沸時間15~20分
140~143℃程度の沸騰状態にある黒染液で煮沸します。
●鋳物、SKDなどの超鋼は45~50分煮沸します。
●平面部が多い部品は、立て掛けられる治具を作成してください。形状に応じた治具の開発が成功裏な黒染めのポイントです。
●ワイヤーカット面、レーザー加工面、浸炭焼き入れ面は赤茶色になります。ブラストをかけ表面を削ってください。
●必ず設定温度範囲内で煮沸状態を維持してください。
すすぎ
水洗時間1~2分
素早くすすぎ水に移して部品の中まで充分に冷やしてください。
●表面の水分が蒸発して酸素と触れた瞬間に、黒錆が赤錆に変化してしまいます。黒染槽からは6秒以内に移してください。
仕上げすすぎ
水洗時間1~2分
充分に水をオーバーフローさせながら、綺麗な水で仕上げてください。
●黒染剤が溶け込んだ水で仕上げますと、乾燥後白い粉を吹き早期錆びが発生します。必ずきれいな水で仕上げてください。
防錆処理
浸漬時間0.5分
乾燥時間30~60分
水置換性もしくは水溶性防錆剤に浸漬し、充分乾燥させてください。
●水置換性の無い防錆剤を使用すると水を抱え込み錆びの原因になりますのでご注意ください。
●乾燥時間が確保できない場合は、部品を防錆油に浸漬後、防錆油を含浸させた布で軽く拭き上げてください。
セット内容
①半自動黒染処理機器本体
②網籠:2個
③ローディング用作業台:2台
④防錆加工用作業台
⑤防錆油槽(蓋付)
⑥中和放流中継タンク
⑦薬剤一式
・水溶性アルカリ脱脂剤
・黒染剤
・水置換性防錆剤
・40%濃度中和用稀硫酸
(錆取り、染め直し、中和用)
⑧作業用備品
・フェイスマスク
・手袋
・エプロン
標準タイプ | 拡大タイプ | |
加温槽寸法 | 2,800W×680D×930H | 3,650W×835D×930H |
浸漬用篭寸法 | 320W×320D×400H | 400W×500D×400H |
加工液適正量 | 37ℓ | 110ℓ |
電源 | 3相 200V 40A | 3相 200V 75A |
ヒーター容量 | 6KW(黒染槽)+6KW(脱脂槽) | 5.4KW×2(黒染槽)+5.4KW(脱脂槽) |
材質 | 槽:SUS304/ヒーター:SUS316 | |
ローディング用作業台 | 900W×600D×800H | 1,200W×600D×800H |
乾燥用作業台 | 900W×600D×800H | 1,200W×600D×800H |
防錆油槽(蓋付) | 容量 50ℓ 550W×350D×300H(内寸) | 容量 100ℓ 600W×450D×370H(内寸) |
中和用中継タンク | 600φ×800H |
事前準備事項
標準タイプ | 拡大タイプ | |
給水用ホース(糸入り内径15mmホース) | 蛇口から機器向って左側給水口までの長さ | |
---|---|---|
排水用ホース(内径19mmホース) | 機器向って左側の排水口から排水溝までの長さ | |
給電(本器ブレーカー容量) ※給電は電気工事業者にご依頼下さい |
200V 3P 40A(ELB) 機器端子ネジ径:5mm 【ヒーター:6kW×2】 |
200V 3P 75A(ELB) 機器端子ネジ径:6mm 【ヒーター:5.4kW×3】 |
半自動黒染処理機器図面
拡大機器
標準機器
大型黒染処理設備や全自動黒染処理設備など、任意の仕様での設備導入をサポート致します。設備メーカーとの橋渡し役として、最善の黒染品質を実現する設備の仕様詳細を弊社がサービスにて調整サポート致します。
大型黒染処理設備導入事例
全ての鋼材種を同一温度(140~145℃ 注:常時沸騰状態を維持)にて、15~20分で漆黒に仕上げます。鋳物、高速度鋼、ダイス鋼などの染まり難い鋼材は45~50分で漆黒に仕上がります。
注)皮膜色を確認する時は、2~3秒単位でこまめに溶液から出し入れしながら色見を確認してください。表面の水分が蒸発して酸素と触れた瞬間に酸化して赤さびに変化してしまいます。
部品の平面部分に網かごや他の部品が密着した痕が残る場合があります。平面部分が多い部品は、針金で吊り下げるか立てかける治具を製作して加工してください。ネジやバネなど、液が廻る形状の部品はそのまま網籠に入れても問題ありません。
煮沸後の部品表面が熱い状態で空気に触れますと瞬時に赤味を帯びてしまいます。黒染め加工後は10秒程度で素早くすすぎ槽に移し部品の中心部まで充分に冷却させてください。
黒染加工後は、綺麗な水ですすぎを充分に行ってください。すすぎ水が汚れていると早期粒錆の原因になります。
必ず、設定温度範囲内で煮沸している状態で部品を投入してください。部品投入時に沸騰が治まる時間を2~3分程度に抑えるのが理想です。一度に多量の部品を入れ過ぎないようにしてください。
自動注水機能はありませんので、設定温度に達したら都度注水が必要です。
前・後処理槽は別途ご準備ください。
処理剤、補助具はセットになっておりません。
AR-Ⅱ型
小物部品の少量加工に適します。
【仕様】
槽寸法:230Φ×278H(mm)
籠寸法:180Φ×200H(mm)
適正容量:6ℓ
電源:100V
ヒータ容量:1.5KW
主な機能:デジタル温度計、サーモスタット
AA-Ⅱ型
小物部品の処理に適します。
量産に耐える剛性および断熱性を有します。
【仕様】
槽寸法:350D×550W×370H(mm)
籠寸法:210D×450W×340H(mm)
適正容量:25ℓ
電源:3相 200V
ヒータ容量:5.4KW
主な機能:デジタル温度計、サーモスタット、温度感知ランプ、ブザー
AA-Ⅲ型 キャスター付き (単槽)
中型部品および小型部品の多量処理に適します。
【仕様】
槽寸法:500D×700W×630H(mm)
籠寸法:340D×500W×530H(mm)
適正容量:60ℓ
電源:3相 200V
ヒータ容量:12.0KW
主な機能:デジタル温度計、サーモスタット、温度感知ランプ、ブザー
AL-Ⅰ型 キャスター付き (ダブル槽)
長尺物および小・中型部品の量産処理に適します。
【仕様】
槽寸法:400D×1,300W×450H(mm)
籠寸法:240D×1,000W×350H(mm)
適正容量:70ℓ
電源:3相 200V
ヒータ容量:12.0KW
主な機能:デジタル温度計、サーモスタット、温度感知ランプ、ブザー
オプション
大量処理にも耐えるよう剛性に配慮。
断熱機能も強化されています。
自動中和装置〈CEMCO社製〉
カスタマイズ例
ワークの部品形状に適したオリジナル網籠の作成を承ります。
付属部品である網籠にセットできる浅い籠と、板材を立てかけて加工できる2種類の治具制作例です。
※黒染め加工手順の詳細は、使用説明書をご覧下さい。